研究・医療・産業用特殊電源

世界最高性能の加速器を支えるニチコンの特機技術

〜世界TOPレベルの高電圧・大電流・パルス制御技術〜

当社は電力用高圧進相コンデンサや各種電子機器用コンデンサの開発・製造で培った技術を駆使して、30年近くにわたり加速器 (シンクトロン) 関連用の高性能電源を開発してきました。これは当社が誇る特機技術の一面でありますが、大学や研究機関に多数の納入実績を持ち、わが国の物理学の発展に少なからぬ貢献をしてきました。 当社が関ってきた最近の加速器実験施設についてご紹介します。

3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」に加速器用電源を納入

3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」は、東北大学キャンパス内に国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構と一般財団法人光科学イノベーションセンターらが建設した次世代の放射光施設で、2024年4月に本格稼働を開始しました。

NanoTerasu(ナノテラス)は、太陽光の10億倍以上の明るい光「放射光」を使い、モノの構造や状態をナノ(10億分の1)レベルで可視化でき、
「ナノまで見える巨大な顕微鏡」とも言われています。

ナノメートルまでみるX線には「軟X線」と「硬X線」の2種類があり、NanoTerasu(ナノテラス)は「軟X線」を得意とする世界トップクラスの性能を持った放射光施設です。一方、既設のSPring-8(兵庫県佐用町)は硬X線を得意とする世界トップクラスの性能を持った放射光施設となります。

ニチコンは、SPring-8、またNanoTerasu(ナノテラス)にも「クライストロン用モジュレータ電源とその充電器」、「小型電磁石用直流電源」、
「クライストロン用電源」など多くの電源を納入いたしました。

放射光科学の粋を結集した測定法は、元素分布、化学結合状態、電子状態、分子配向、結晶構造分析など様々な物質を調べることを可能にし、
自動車・タイヤ・産業用機械・電子機器・電子部品・化学・非金属・金属・エネルギー・製薬・化粧品・ヘルスケア・金融・農業・食品等の、幅広い分野の研究開発・ものづくりに活用され、日本の産業競争力を高め、人々の生活を豊かにすることが期待されています。NanoTerasu(ナノテラス)は、
物質や生命の "機能を可視化" することにより、研究開発の仮説検証のサイクルを加速し、サステナブルな社会の実現が期待されています。

NanoTerasu(ナノテラス)全景

クライストロン電源用の超高精度高電圧充電器(ラック内)、モジュレータ 各21台

小型電磁石用直流電源(ラック内)
制御ユニット 58台、出力ユニット 221台

蓄積リング用クライストロン電源<直流高圧盤>

<変圧整流器>

<ご参考>
3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)について:https://www.nanoterasu.jp/

SiCパワーデバイスを搭載した「高出力パルス電源」を共同開発

~SACLAでの2本の硬X線FELビームラインの同時高出力運転に貢献~

理化学研究所、高輝度光科学研究センターは、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)施設 SACLAで稼働している2本の硬X線FELビームラインについて、同時に、40ギガワットを超える高いレーザー出力で運転することに成功されました。

高出力運転のためには、キッカー電磁石をこれまでの約6倍の電圧で動作させる必要があり、当社はこのために必要となる高出力パルス電源を理化学研究所、高輝度光科学研究センターと共同で開発しました。次世代のパワー半導体デバイスである「SiC MOSFET」を利用することで、電力の損失が少なく、設定電流値からの偏差が0.001%精度という、高効率かつ高安定性を持つ電源を実現しました。

今までは利用者に提供可能なビームタイムの不足が課題となっていましたが、今後は複数ビームラインの高出力同時運転を生かした利用機会の増加による成果の拡充や、特色あるXFELの利用法の開拓を通したユニークな成果の創出などが期待されます。

SACLA(X-FEL)用超高精度高電圧充電器の開発

「国家基幹技術」に認定されている国家プロジェクト、「SACLA (X-FEL : X線自由電子レーザー) 計画」。物資を原子レベルの大きさ、かつ瞬時の動きを観察することができる「夢の光」として注目されています。この新しいX線利用施設によって、材料化学、プラズマ物理、宇宙物理、化学、構造生物学、生命化学などに優れた基礎科学の成果が期待され、核融合、触媒などを含む広い分野に大きな波及効果が予想されています。当社はSACLAを安定動作させるために0.01%の誤差範囲という極めて高い精度の高電圧充電器の開発に成功しました。

このSACLA(X-FEL)計画では、クライストロン用モジュレータ電源に、72台のニチコンの超高精度高電圧充電器と70台のモジュレータが使用されています。

出典:国立研究開発法人 理化学研究所

超高精度高電圧充電器(写真右、ラック内)
モジュレータ(写真左)

J-PARC(茨城県東海村/日本原子力研究開発機構)

大強度陽子加速器施設 J-PARC( Japan Proton Accelerator Research Complex )は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で進める、世界最高クラスの大強度陽子ビームを生成する加速器と、その大強度陽子ビームを利用する実験施設で構成される最先端科学の研究施設です。
ニチコンは我が国の主要な加速器プロジェクトや、多くの研究機関、そして加速器メーカに優れた製品を納入し、高い評価を得てまいりました。J-PARCにおいても各種高精度電源の開発に取り組んでいます。

世界最大級の大型放射光施設「SPring-8」でもニチコンの技術が活躍

播磨科学公園都市にある世界最大級の大型放射光施設「SPring-8」は、世界最高性能の「放射光」を発生することができる大型の研究施設です。この施設にニチコンが開発した「電磁石用大電流安定化電源」「クライストロン用電源」をはじめいくつもの電源が導入されています。

放射光は生命科学や環境科学、医療や産業など広範な分野における最先端の研究に役立つ「科学の光」。例えば、半導体の露光や解析に利用されています。ニチコンは、高電圧・大電流制御技術を駆使し、ビッグプロジェクトの一翼を担っています。

医療機関への展開

がんの新しい治療法として注目を集めている「粒子線治療」、元素の原子核を加速して患部に照射することで、病巣をピンポイントで破壊する。ここにも当社の高電圧大電流制御技術、大容量インバータ技術、直流安定化技術、高精度デジタル技術を駆使した「超高精度加速器用電源」が活躍しています。

ガンを切らずに治す
出典:名古屋陽子線治療センター

最先端の粒子線がん治療装置
出典:(株)ビードットメディカル
https://bdotmed.co.jp

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